風営法における「接待」とは何か

ぼったくりを繰り返していたとみられるスナックが摘発され、無許可でホステスに客の「接待」をさせた容疑で経営者が逮捕されました。

この店では、ホステスが客に抱きついたりキスをしたりして強い酒をすすめていました。

ぼったくり繰り返したか、中国人スナック2店摘発

東京のJR新橋駅近くでぼったくりを繰り返していたとみられる中国人スナック2店が摘発され、経営者の〇〇〇〇容疑者(40)ら4人が警視庁に逮捕されました。

〇〇容疑者らは、風俗営業の許可を得ずにホステスに客の接待をさせた疑いが持たれています。

この店では、客にホステスが抱きついたりキスをしたりして、強い酒をすすめて酔わせたうえ、クレジットカードを勝手に使って決済するなど、悪質な手口でぼったくりを繰り返していたとみられています。

警視庁によりますと、〇〇容疑者らは2012年からの3年半で少なくとも1億4000万円を売り上げていたということです。

JR新橋駅近くには悪質な中国人スナックやマッサージ店が30店舗近くあり、今年に入って同様の料金トラブルの相談が185件相次いでいるということで、警視庁が取り締まりを強化しています。(30日15:50)

(TBS News i http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2624423.html より引用。容疑者の氏名については伏字にしました。)

接待とは

ここで問題となっている「接待」とは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)2条3項が定める接待です。

風営法2条3項
この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。

警察庁の通達(警察庁生活安全局保安課「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」平成28年2月1日付)によると、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(風営法2条3項)の意味は下記のとおりです。

1 接待の定義
接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」をいう。

この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して3の各号に掲げるような興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。言い換えれば、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。

2 接待の主体
通常の場合、接待を行うのは、営業者やその雇用している者が多いが、それに限らず、料理店で芸者が接待する場合、旅館・ホテル等でバンケットクラブのホステスが接待する場合、営業者との明示又は黙示の契約・了解の下に客を装った者が接待する場合等を含み、女給、仲居、接待婦等その名称のいかんを問うものではない。

また、接待は、通常は異性によることが多いが、それに限られるものではない。

3 接待の判断基準
(1) 談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に当たる。

これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。

((2)~(4)略)

(5) その他
客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当たる。ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は、接待に当たらない。

また、客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為も接待に当たる。

これに対して、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、コート等を預かる行為等は、接待に当たらない。

(通達7~9頁より引用)

本件では、ホステスが客に抱きついたりキスをしたりして強い酒をすすめています。

こうした行為は、上記「3 接待の判断基準 (1)談笑・お酌等」の「特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為」に該当します。また、同「(5)その他」の「客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為」にも該当します。

したがって本件では、風営法上の「接待」が行われたといえます。

接待と風俗営業

設備を設けて客の「接待」をして客に飲食をさせる営業は「風俗営業」(風営法2条1項1号)です。

風俗営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません(風営法3条1項)。

無許可で風俗営業を営むと刑事罰に処せられます。法定刑は「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」(風営法49条)であり、風営法で一番重い刑となっています。