レンタルルームを装った性的マッサージ店が摘発

レンタルルームを装い客に性的サービスをした容疑で、歌舞伎町のマッサージ店が摘発されました。

「最後までできる」歌舞伎町レンタルルームで12万円(2016/01/21 11:59)

東京・歌舞伎町で、レンタルルームを装って無許可で客に性的サービスをしたとしてマッサージ店が摘発されました。

〇〇〇容疑者(38)ら5人は、レンタルルームを装って個室マッサージ店を経営し、先月、女性従業員に男性客(24)への性的サービスをさせた疑いが持たれています。警視庁によりますと、〇〇容疑者は容疑を否認しています。〇〇容疑者らは、3万円程度で「最後までできる」と客を路上で勧誘し、その後、店内で「サービス料」などとして料金を上積みし、最終的に12万円を強制的に支払わせたということです。店を巡っては料金トラブルの相談や通報が去年1年で200件以上、寄せられていました。

(tv asahi5 webサイト http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000066668.html から引用。容疑者の氏名については伏字にしました。)

摘発されたマッサージ店では、女性従業員が男性客に対し性的サービスをしていました。異性の客に接触する性的サービスを提供する場合、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)上、店舗型性風俗特殊営業または無店舗型性風俗特殊営業として規制を受けます。

店舗型性風俗特殊営業

店舗型性風俗特殊営業にはいくつかの種類があります。そのうち客に接触する性的サービスを提供するものは店舗型ファッションヘルス営業であり、風営法2条6項2号で定義されています。

風営法2条6項
この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
(1号略)
2号 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)
(3号以下略)

なお風営法2条6項2号のカッコ書きにおいて除かれている「前号に該当する営業」とは、ソープランドを指しています。1号の条文は「1号 浴場業(公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第1条第1項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」となっており、2号にあった「性的好奇心に応じて」という文言が落ちています。性的好奇心に応じるものであるかどうかは問われていないものの、「異性の客に接触する役務」である以上性的な規律と無関係とはいえないので、ソープランドも「店舗型性風俗特殊営業」のカテゴリーに位置しているのでしょう。

店舗型性風俗特殊営業を営もうとする場合、届出をしなければなりません(風営法27条1項)。禁止区域の規制(風営法28条1項、2項)や営業時間の規制(風営法28条4項)もあります。

無店舗型性風俗特殊営業

無店舗型性風俗特殊営業にはデリヘル(派遣型ファッションヘルス営業)とアダルトビデオ等通信販売営業の2種類があります。このうち客に接触する性的サービスを提供しているのはデリヘルであり、風営法2条7項1号で定義されています。

風営法2条7項
この法律において「無店舗型性風俗特殊営業」とは,次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
1号 人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの
(2号略)

無店舗型性風俗特殊営業を営もうとする場合、届出をしなければなりません(風営法31条の2第1項)。

無届営業に対する刑事罰

店舗型性風俗特殊営業や無店舗型性風俗特殊営業の無届営業には、刑事罰の罰則があります。法定刑は「6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」です(風営法52条4号)。

本件の実態はぼったくり

料金を上積みして最終的に12万円を支払わせていることからすると、本件はレンタルルームを利用したぼったくりの事案です。本来なら素直にぼったくりに着目して摘発したいところなのですが、ぼったくりをぼったくりとして刑事事件化することは困難です。なぜなら金額に関する合意の有無は「言った」「言わない」の水掛け論になりやすく、客観的な証拠に乏しいからです。

そこで本件では、ぼったくりについては一旦脇に置きました。マッサージ店による性的サービスが問題となっており、風営法上の店舗型性風俗特殊営業または無店舗型性風俗特殊営業に該当することは明らかなので、性風俗特殊営業の無届営業に着目して摘発しています。なお記事では「無許可で客に性的サービス」となっていますが、性的サービスをする場合に必要なのは許可ではなく届出なので、これは無届営業を指しているのでしょう。