16歳の少女をキャバクラに引き渡した容疑者が、児童福祉法違反で逮捕されました。
2016.7.22 07:58
キャバクラ店に高2少女派遣 容疑の男逮捕 兵庫県警
18歳未満の少女を深夜に働かせることを知りながらキャバクラ店に引き渡したとして、兵庫県警姫路署は21日、児童福祉法違反容疑で同県姫路市四郷町東阿保、建設業、〇〇〇〇容疑者(36)を逮捕した。「派遣したことは間違いないが、18歳未満かどうかは確認していなかった」などと容疑を一部否認しているという。
逮捕容疑は6月17日午後8時半ごろ、県内の高校2年の少女(16)が18歳未満であり、深夜に勤務させられることを知りながら、同市内のキャバクラ店の70代の女性経営者に引き渡したとしている。
(産経WEST http://www.sankei.com/west/news/160722/wst1607220010-n1.html より引用。容疑者の氏名は伏字にしました。)
児童とは
容疑者は児童福祉法違反で逮捕されているので、まず「児童」の定義について検討します。
児童福祉法における「児童」とは、満18歳に満たない者をいいます(児童福祉法4条1項柱書)。
本件においてキャバクラに引き渡された少女は16歳なので、「児童」に該当します。
刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者への児童引き渡しの禁止
児童に対し刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知って、児童を引き渡す行為は禁止されています(児童福祉法34条1項7号)。そこで、容疑者が児童福祉法34条1項7号に違反しているかどうかについて検討します。
容疑者はキャバクラの70代の女性経営者に少女を引き渡しているところ、記事によると、この女性経営者は児童を深夜に勤務させるおそれがあります。児童を午後10時から午前5時までの深夜に使用することは労働基準法61条1項に違反し、労働基準法61条1項違反には刑事罰の罰則があります(労働基準法119条1号)。したがって、70代の女性経営者は「児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者」(児童福祉法34条1項7号)に該当します。
容疑者は、児童に対し刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある女性経営者に事情を知りながら16歳の児童を引き渡しているので、児童福祉法34条1項7号に違反しています。
児童福祉法34条1項7号違反には刑事罰の罰則があり、法定刑は「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」です(児童福祉法60条2項)。容疑者は、この児童福祉法34条1項7号違反の容疑で逮捕されたものと思われます。
なお児童を深夜に働かせなくても、客の接待をさせると風営法違反となり、やはり刑事罰の罰則があります(風営法22条3号、50条1項4号)。
年齢確認の重要性
児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として児童福祉法60条2項の処罰を免れることができません。ただし、過失のないときはこの限りではありません(児童福祉法60条4項)。
容疑者は「派遣したことは間違いないが、18歳未満かどうかは確認していなかった」と弁解しています。年齢確認をしていないのですから注意義務に違反したことは明らかであり、無過失とはいえません。したがって、児童福祉法違反の処罰を免れることはできません。
18歳以上かどうかはっきりしない人を18歳以上の者として採用する場合には、過失がないといえるレベルの厳重な年齢確認をしなければなりません。写真付きの身分証明書(運転免許証、パスポート等)を提示させることはもちろん、偽造や別人の身分証を使っているおそれを排除するため、住民票の提出や学校の卒業アルバムの確認等を行うことも必要です。こうした書類によるチェックだけにとどまらず、本人と面接を行い、18歳以上であることを確信できる回答を引き出すこともした方がよいでしょう。
まとめ
18歳未満の児童を深夜に働かせてはいけません。深夜に働かせなくても、客の接待をさせてはいけません。