雑誌「FRIDAY」において、2回にわたり、俳優の成宮寛貴氏がコカインを吸引したり要求したりしたとする記事が掲載されました。
しかし「FRIDAY」の記事を検討する限り、成宮氏とコカインを結びつける証拠はありません。以下詳述します。
A氏のコカイン購入供述の信用性が問題になる
記事では、A氏という人物が成宮氏に頼まれてコカインを買った旨を供述しています。成宮氏とコカインの結びつきを裏付ける可能性のある証拠はこの供述だけです。
なお記事では他にもA氏の目撃談、写真、成宮氏の発言等が掲載されています。しかし例えばA氏の目撃談はそれがコカインであるとする根拠がありません。写真についても同様です。成宮氏の発言については「チャーリー」と言っているだけであり、それをもってコカインを要求しているとするのは無理があります。
したがって記事における成宮氏とコカインの結びつきの真偽を検討する上では、A氏が成宮氏に頼まれてコカインを買った旨の供述の信用性を検討すれば充分といえます。
A氏の供述の内容
成宮氏に頼まれてコカインを買ったとするA氏の供述は次のとおりです。
成宮とA氏は前日11月8日の夜9時ごろから、六本木にあるレストランの個室で食事をしていたという。店に入ってしばらくすると成宮が「あってもいいんじゃない?」と言い出し、いつものようにA氏にコカインを買いに行くことを要求したというのだ。〝パシリ〟をやらされたA氏は店の外に出て、路上にたむろする外国人の売人からコカインを購入。
(「FRIDAY」平成28年12月23日号 18頁より引用)
この供述の信用性について、客観的証拠との整合性、供述に至る経緯、供述内容の合理性の3点から検討します。
客観的証拠はない
A氏の供述を裏付ける客観的証拠はありません。
供述に至る経緯が不自然
供述に至る経緯について、A氏は次のように述べています。
「ヒロキは有名人だから身元がわかるのが怖いという理由で、絶対に自分でコカインを買わない。いつも『売人から買ってきてよ』と人に買いに行かせるんです。なんで僕がこんなことをしないといけないのか……。これ以上、危ない橋は渡れないと思った」
(「FRIDAY」平成28年12月23日号 19頁より引用)
A氏が成宮氏に頼まれてコカインを買ったとするならば、A氏は麻薬及び向精神薬取締法違反の罪の共同正犯または幇助犯です。雑誌に告発をすることは問題の顕在化につながり、「危ない橋は渡れない」とする動機と矛盾します。
そもそもコカインを買いに行くように頼まれたとしても、犯罪行為に加担することになるのですから断るのが通常です。買いに行くにはそれなりの理由が必要ですが、A氏はその理由を何も説明していません。
このように供述に至る経緯は不自然です。
供述内容に合理性がない
A氏の供述によると、成宮氏が「あってもいいんじゃない?」と述べ、それを聞いたA氏はコカインを買いに行くことを要求されていると思い、外に出てコカインを買いにいったということです。
「あってもいいんじゃない?」と言われてA氏がそれをコカインだと考える理由が不明です。仮にコカインを買いに行くことを要求していたとしても、A氏が断らなかった理由も不明です。代金はいくらだったのか、その代金は誰が負担したのかについても説明されていません。
またA氏は店の外に出て、路上にたむろする外国人の売人からコカインを購入したとしています。六本木のような繁華街では街頭に多数の監視カメラが設置されており、行動の記録が残りやすい場所で違法薬物の売人が寄り集まって取引をするとは考え難いです。11月8日は火曜日であり、平日の夜9時頃という早い時間に売人がたむろしていたら目立つので、地元の麻布署の警察官から職務質問を受けることになるでしょう。
A氏の供述内容には合理性がありません。
まとめ
以上のとおりですので、成宮氏に頼まれてコカインを買ったというA氏の供述は信用できません。
結論として、「FRIDAY」の記事を検討する限り成宮氏とコカインを結びつける証拠はありません。
追記
成宮氏が薬物の検査を避けるために12月9日頃から海外にいるという噂があります。
しかし仮に薬物を抜くためなら、遅くとも「FRIDAY」が第一報を出した12月2日の直後に逃げないと意味がありません。本件はそれには該当しないでしょう。