モデル募集サイトの運営者が職業安定法違反で逮捕

アダルトビデオ(AV)の出演者を集めた容疑で、モデル募集サイトの運営者が逮捕されました。逮捕容疑は、有害な業務に就かせる目的での労働者の募集を禁じた職業安定法違反です。

女子高生だましAV出演=モデルで募集、被害200人か-自営業の男逮捕・大阪府警

コスプレモデルの撮影と偽り、アダルトビデオ(AV)の出演者を集めていたとして、大阪府警保安課は29日、住所不詳の自営業〇〇〇〇容疑者(48)を職業安定法違反(有害業務募集)容疑で逮捕した。19都府県の女子高校生ら約200人が被害に遭ったとみられ、同課は出演を強要した疑いも視野に実態解明を進めている。

逮捕容疑は2014年10月、府内の当時18歳の高校3年生を、AV女優として有害業務をさせる目的で募集した疑い。容疑を認めているという。

同課によると、同容疑者は遅くとも12年7月ごろからインターネットサイトで、18、19歳に限定し5万~20万円の報酬で女性を募集。「アイドルグループなどの衣装を着るだけで顔も出ない」などとしていたが、実際には極端に小さな水着を着させたわいせつなビデオやAVに出演させていた。(2017/05/29-19:42)(時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/article?k=2017052900936&g=soc より引用。氏名については伏字にしました。)

「公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的での労働者の募集の禁止

職業安定法では「公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的での労働者の募集(有害業務募集)が禁止されています。

職業安定法63条
次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
(1号略)
2号 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者

「労働者の募集」「勧誘」「働きかけ」

有害業務募集における「労働者の募集」(職業安定法63条2号)とは、労働者を雇用しようとする者が、自らまたは他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいいます(職業安定法4条5項)。

職業安定法4条
(1項~4項略)
5項 この法律において「労働者の募集」とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいう。
(6項以下略)

「労働者の募集」の要件である「勧誘」(職業安定法4条5項)とは、労働者となろうとする者に対し、被用者となるように勧め、あるいは誘うなどの何らかの働きかけをすることをいいます(東京地判平成8年11月26日判例タイムズ942号261頁)。

「勧誘」といえるためには「働きかけ」が必要です。

本件へのあてはめ

本件におけるAVへの出演は「公衆道徳上有害な業務」にあたると考えられます。

容疑者は「アイドルグループなどの衣装を着るだけで顔も出ない」などと雇用条件を偽りつつモデル募集サイトで女性を集めていたのですから、集めた女性に対し、女優としてAVに出演させる過程において勧めたり誘ったりといった何らかの働きかけを行ったことがうかがわれます。「働きかけ」を行っていたならば、容疑者の行為は「勧誘」ひいては「労働者の募集」にあたります。

そうすると容疑者は「公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的で「労働者の募集」を行ったことになり、職業安定法63条2号に違反します。

なおAVに勧誘した女性が今から3年前の2014年10月当時において18歳の高校生だったことは、量刑の理由として考慮されるものの、有害業務募集の犯罪の成否に直結する事実とはいえないでしょう。

まとめ

インターネットサイトの運営者が、コスプレモデルの撮影と偽り女性を集めてAVに出演させ、職業安定法違反の有害業務募集の容疑で逮捕されました。